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コラム、トピックス

プラスチック微粒子の人体蓄積とその影響

プラスチック微粒子の人体への影響に国内外で関心が高まっています。

その研究、調査の最新事情を紹介します。

(日本経済新聞から)

1.進む海外研究

 プラスチック廃棄物、特にマイクロプラスチック、ナノプラスチックの人体や健康への影響については、ここ数年海外で急速に研究が進んでいるようです。

脳にまで蓄積

 特に注目されたのが、昨年2024年9月JAPAN Forbesに紹介された記事です。死亡者の脳に他の臓器の最大20倍のマイクロプラスチックが含まれ、脳の質量の0.5%を占める可能性があること。さらに臭覚を司る嗅球の組織にマイクロプラスチックが含まれていた遺体も多く、マイクロプラスチックが脳に入り込む潜在的な経路が示された、とも説明されています。(参考資料①)

そして今年2月、Newsweekは脳に蓄積しているプラスチック微粒子は8年間で1.5倍になったという米ニューメキシコ大学の研究を紹介しました。同大学の法医学調査室で保管していた2016年と2024年の解剖遺体の組織を比較したもので、12種類のプラスチックが確認され、ペットボトルなどに使われるポリエチレンが一番多かったといいます。

 脳におけるマイクロプラスチックの存在は神経変性疾患のリスクを高めると研究者に懸念が広がっています。

 マイクロプラスチックはこれまでに人の血管、心臓、肺、肝臓の組織、男性の生殖器官などから検出されており、更に母乳や胎盤にも認められています。この7月には人の精液と卵胞液にも確認が報告されました。

 そしてその影響として肺炎や肺がん、代謝障害、内分泌かく乱作用、生殖機能の低下などのリスクが指摘されています。遺伝子の発現の変化やデオキシリボ核酸(DNA)そのものにも影響するともいわれています。また動脈プラークでもマイクロプラスチックが見つかっており、検出された患者が3年以内に心臓発作や脳卒中を起こす可能性が4.5倍高かったとの研究も5月にNewsweekが紹介しました。

 胎盤に蓄積したプラスチックによる早産の可能性も報告されています。

 先ほどのニューメキシコ大の研究チームは、プラスチック微粒子はとりわけ脳において残留濃度が高いとも指摘。その蓄積ベースは世界におけるプラスチックごみの増加に比例しているとも述べており、脳に残留しやすい理由などとともに今後の調査研究が待たれます。

資料①JAMAネットワークオープン・「人間の脳の嗅球におけるマイクロプラスチック」

2.遅れている日本の研究?

 海外のプラスチック微粒子の人体影響研究に比べると、日本の研究が余り目につきません。マイクロプラスチックの環境影響などは海外に比べそん色はなく、注目される先進的な研究もありますが、臨床・人体影響は疫学的調査も含め、大規模研究が進んでいないようです。

 EU諸国ではマイクロプラスチックの規制と人体への影響に関する予防的研究制度が制度的に連携し、研究支援体制が整っているといわれます。

 日本は宇宙や再生医療、AIなどに比べ環境保健や公衆衛生分野の研究への予算が少ないと言われます。

 またマイクロプラスチック問題は環境と健康の両面の要素があり、そのために例えば環境省と厚生労働省、文部省などの協力が欠かせません。その調整がこれまで十分といえなかった面も指摘されており、規制とともに健康被害を防ぐ国の本格的な取り組みが期待されています。