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コラム、トピックス

プラスチックはなぜ体に悪いのか

いまや、ペットボトルに代表されるプラスチックが地球上のあらゆる場所──南極から北極、深海から富士山上空まで──に拡散し、私たちの身体にも侵入しています。こうして、地上でも海洋でも膨大な量の蓄積が始まっています。

では、そのプラスチック廃棄物は人の体にどのようなリスクをもたらすのでしょうか。

 今までの研究で、微小なプラスチック粒子(マイクロプラスチックやもっと小さなナノプラスチック)が血流や臓器に入り込み、脳、肺、肝臓、腎臓、脾臓、胃、さらには胎盤など体内の様々な部位に蓄積し得ることが明らかになっています。

こうした微小プラスチックの全身分布がわかるにつれ、その健康影響への懸念が高まっています。

具体的には、マイクロプラスチックやナノプラスチックを摂取することで、消化器系や内分泌系、免疫系に悪影響が及ぶ可能性があります。

また、プラスチックに含まれる添加剤や、プラスチックに吸着した有害物質(ダイオキシンなど)が、発がん性や内分泌かく乱作用を持つ可能性も指摘されています。

 

臓器などへのリスクは以下の通りです。

・消化器系:

マイクロプラスチックが腸内細菌叢を乱し、炎症を引き起こす可能性があります。

・内分泌系:

プラスチック添加剤やマイクロプラスチックに吸着した有害物質が、ホルモンバランスを乱す可能性があります。

・免疫系:

マイクロプラスチックが免疫細胞に影響を与え、アレルギーや炎症を引き起こす可能性があります。

・心臓血管系:

マイクロプラスチックが血管内にたまることで、心臓発作や脳卒中のリスクが高まる可能性があります。

・呼吸器系:

マイクロプラスチックが肺に入り、肺炎や喘息を引き起こす可能性があります。

・がん:

マイクロプラスチックに吸着したダイオキシンなどの有害物質が、発がん性を持つ可能性があります。また、プラスチックは内分泌かく乱物質を放出し、特定のがんのリスクを高めるとかんがえられています。

 以上のような危険性が指摘されていますが、人体への影響の研究はまだ初期段階です。脳にもその質量の0.5%を微小プラスチックが占めるという研究論文もあります。体内での影響は、微小プラスチックの質と量による変化や、長期的影響などの研究が待たれます。

※マイクロプラスチック=5㎜以下の微細なプラスチックごみを指し、レジ袋やペットボトルなどが紫外線や水中の波動などで劣化して生まれます。さらに小さい0.1㎜以下のものはマイクロビーズといわれ。肌の表面を滑らかにするために化粧品に添加されたり、汚れを取るために歯磨き粉や洗剤に使われてもいました。

<参考文献>

・小池 英子:マイクロプラスチック関連化学物質の健康影響:エアロゾル研究,38(3), 187–193:2023.

・小池 英子:マイクロプラスチックによる健康影響の懸念とその要因:ビルと環境,(189), 41–44:2025.

・高田 秀重:マイクロプラスチック汚染の現状,国際動向および対策;廃棄物資源循環学会誌, 29(4), 261-269,:2018.

・堤 康央:マイクロ・ナノプラスチックのヒト健康影響の解明に向けて:薬学雑誌 144 (2), 163-164:2024.

・Alexander J. Nihart , et al: Bioaccumulation of microplastics in decedent human brains; nature med: 2024.

・Banaei G, et al: Teabag-derived micro/nanoplastics (true-to-life MNPLs) as a surrogate for real-life exposure escenaris,; Chemosphere 368: 2024.

・Luís Fernando Amato-Lourenço, et al: Microplastics in the Olfactory Bulb of the Human Brain; JAMA Netw: 2024.

・Matthew Campen, et al: Bioaccumulation of Microplastics in Decedent Human Brains Assessed by Pyrolysis Gas Chromatography-Mass Spectrometry: Res Sq: 2024.

・Natsu Sunaga, et al: Alkaline extraction yields a higher number of microplastics in forest canopy leaves: implication for microplastic storage; Environmental Chemistry Letters: 2024.

・Rodrigues, J. P., et al: Significance of interactions between microplastics and POPs in the marine environment: A critical overview; 2019.