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気候・異常気象
2025.12.01
異常気象激増

推移と増加の要因

 2025年は11月に入っても東南アジアやスリランカで異常気象による大きな被害が続いています。インドネシア、マレーシア、タイでの豪雨と土砂崩れなどによる死者は600人を超え、被災者は400万人を超えたと報道されています。スリランカのサイクロンも死者・行方不明が700人を超え、110万人が被災したと伝えられています。
 今年一層酷くなった「異常気象のこれまでの経過、要因」をまとめてみます。

(宇宙から見た台風の目)

世界の異常気象はいつごろから増えているのか

 世界で「異常気象」が増えてきたのは、おおよそ 20世紀後半からで、特に 1970〜1980年代以降に「頻度・強度の増加」が顕著になった、という見方が多いです。World Meteorological Organization (WMO) や気候科学の統計では、過去50年(=1970年代〜現在)で自然災害(異常気象を含む)の頻度が約5倍に増加したという報告があります。

📈国内でも、豪雨や短時間強雨の「1日200ミリ以上の大雨日数」は、1901年以降の統計で有意な増加傾向にあり、最近の30年と最初の30年を比べると約 1.7 に増えているとされています。

 また、最近では「観測史上初」「過去に経験したことがない」ような極端な気象が各地で起きており、これらをきっかけに「異常気象」の増加がより実感されるようになっています。


 増加している主な異常気象の種類

これまで「たまに起きる珍しい天気」だったものが、近年は以下のような形で増えています:

  • 猛暑・熱波(高温日や熱帯夜、記録的な暑さ) 
  • 豪雨・集中豪雨・短時間強雨、洪水
  • 干ばつ、乾燥、渇水
  • ストームの強化、あるいは暴風・暴雨の激甚化

共通すると考えられる主な要因

異常気象が増えている背後には、複数の共通する要因があります。主に以下のようなものです。

  • 地球全体の気温上昇(地球温暖化)
    人間活動による温室効果ガス(CO₂、メタンなど)の大量排出により、大気や海洋が温まりつづけています。これにより、気候システムのバランスが変わり、極端な現象が起きやすくなる。 
  • 大気中の水蒸気量の増加
    気温が高くなると、大気中に含むことができる水蒸気の量が増えるため、同じような低気圧・雲の発達でも、より大量の雨を降らせる可能性が高まる。これが豪雨・洪水の増加につながる。
  • 気候パターンと循環の変化
    温暖化により、海水温が上がったり、氷床や海氷の変化が起きることで、ジェット気流や海流、大気循環のパターンが変化する。これが、熱波・干ばつ・豪雨などの異常気象を「昔と違うタイミング・地域で起きやすくなる」原因のひとつとされる。
  • 気候変動の蓄積的な影響
    温暖化が少しずつ進むことで、もともと起きていた気象のゆらぎ(自然変動)が、より「極端な振れ幅を伴う」ものになりやすくなる。つまり、「単なる気温の変動」ではなく、「より激しい異常」が出やすくなるという傾向です。

異常気象はどの地域でも起きている ― グローバルなトレンド

  • 現在、世界のほぼすべての地域で、何らかの形で気候変動の影響が見られており、異常事象(熱波、洪水、干ばつなど)はどこでも起きています。 
  • また、地域によって「どのタイプの異常気象が起きやすいか」は変わるものの、共通して“より激しい/より頻繁な気象の極端化”が報告されています。

ただし…「すべての異常気象が気温上昇のせい」とは言えない

 重要なのは、「すべての異常気象が人為的な気候変動のせい」というわけではないことです。自然の気候変動の影響や地域の気象パターンのゆらぎもあって、すべてが単純に“温暖化のせい”とは断定できないと、研究者は注意を促しています。

 つまり、「極端な猛暑や豪雨が起きた → 地球温暖化が原因」と断言するには慎重である必要があります。ただし統計的には「気温上昇とともに極端な気象の頻度・強度が増えてきた」ことは、かなりの科学的合意があります。 


まとめ

 世界の異常気象(熱波、豪雨、洪水、干ばつ、暴風など)が増えてきたのは、おおむね 1970年代以降。その主な背景には、人為的な地球温暖化による「気温上昇」「大気中の水蒸気量増加」「気候システムの変化」などがあると考えられています。一方で、すべての異常気象が気候変動のせい、というわけではなく、自然の気候変動との複合もあるため、個別事例では慎重な分析が必要とされています。