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今年2025年は、国連の「氷河保護の国際年(International Year of Glaciers’ Preservation)」と制定されました。また氷河の急速な減少現象も報告されています。氷河の現況と国際年の狙いを簡単に振り返ります。

氷河は数十年から数千年余の間に積もった雪が圧縮され氷となり、自らの重さでゆっくり流れているものです。淡水の貯蔵庫として世界の20億人の生活や農業、水力発電などを支えています。
しかし地球の温暖化などで、氷河の減少が加速し始めています。国連の専門機関、世界気象機関(WMO)は、3年単位で見た氷河の喪失が2022年から2024年が過去最多で、調査した世界19か所の全てで減少したことを確認しました。世界の氷河は27万5千余り(※)といわれ、調査が始まった1975年以降、グリーンランドと南極を除き9兆トン減ったとの報道もあります。
(※)日本にも氷河はあり、北アルプスでは9つの氷河が確認されています。
スイスのチューリッヒ工科大学などの研究では、現在の温暖化対策のままだと、産業革命前から2100年までに2.7度上昇し、毎年3000か所の氷河がなくなると予想されています。特に面積も体積も小さい小規模氷河は、熱を吸収しやすく、21世紀中に消滅すると見られています。
氷河の減少、消滅の影響
1. 水資源への影響(生活・農業・産業)
安定した淡水供給の喪失
氷河は天然の「水の貯金箱」として機能し、乾季や雨量の少ない時期でも下流地域に水を供給しています。しかし、氷河が縮小・消失すると、その供給源としての役割が低下し、生活水の枯渇、農業・食料生産のリスク、水力発電への影響もあり、経済成長に波及します。やインフラ計画に影響します。
2. 自然災害・防災リスクの増加
氷河湖決壊洪水(GLOF)
氷河後退に伴い、氷河湖が形成・拡大しますが、湖の堤防の決壊リスクが増大します。
GLOFは下流にある集落やインフラを急激に襲い、人的被害・経済被害が発生します。
2025年も中国とネパールの国境付近(17人行方不明)やアラスカで被害が出ました。
洪水・土砂災害
氷河消失後の地形変化や豪雨との相乗効果で、洪水や土砂災害の頻度・強度が増すことも懸念されています。
3. 生態系と生物多様性の変化
氷河融水は冷たい水を一定量河川へ供給し、魚類や水生生物の生息環境を支えてきました。氷河後退により水温や流量が変わると、魚類の繁殖に影響が出たり生息域の縮小・変化が起こったりし、周辺の生態系変化を招き生物多様性が損なわれる可能性があります。
4. 地域社会・経済への影響
農業や観光、エネルギーなど氷河や融水に依存する産業が影響を受け地域経済が低迷します。開発途上国の山岳地域では、水・農業・エネルギーが一体の生活基盤となっているため、影響はより深刻です。
5. 海面上昇
氷河の融解は極地の氷床ほどではないものの海面上昇も生じます。
沿岸部では塩水侵入による農業・飲料水への影響や低平地住民の移住になりそうです。
以上のように、氷河消失は気候変動だけでなく水安全保障の危機として扱われています。
これらの被害、影響を回避するために氷河保護の国際年が制定されました。
国際年の主な目的は次の3つです
国際年は「記念年」ではなく、行動促進の年として以下のような活動が想定されています。
● 科学・観測・国際協力
● 保全・気候適応
● 社会・教育・啓発
● 経済・コミュニティ支援
これらを目標に、2025年から 毎年3月21日 が 「世界氷河の日(World Day for Glaciers)」 として国連で決まりました。
今年の世界氷河の日には、ニューヨーク(国連本部)やパリ(UNESCO本部)などでシンポジウムや啓発イベントが行われ、氷河の現状や保全の必要性が発信されました。
国連系の組織やNGOが、氷河の科学的データ、影響評価、保全の重要性を伝えるキャンペーンを展開しています。
NGO・市民レベルの活動も活発で、氷河保全をテーマにした展示、教育イベント、SNSキャンペーン、草の根活動などが各地で行われました。