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人と社会への影響
2026.02.04
微小プラスチックの脳内蓄積


NHKで映像公開

微小なプラスチック、ナノプラスチックが体内、それも脳内にまで取り込まれている映像がテレビで公開され注目を集めました。番組は1月28日NHK BSで再放送されたドキュメンタリー「フロンティア 脳に忍び込むナノプラスチックを追う」です。世界の注目を集めた米国の大学による脳内のプラスチック確認を、マウスで追試をして映像で説明、人体でも最もガードが高い脳へのナノプラスチック侵入のメカニズムを解説します。脳内プラスチックは年々増加し、認知症患者のプラスチック濃度が高いなど衝撃的な結果も紹介されますが、まだ人体への影響は確認できておらず、今後の調査、研究の必要性が強調されています。

脳内に高濃度プアスチック
脳内プラスチックについては、B&G・プロジェクトのサイトでも2025年7月に「脳に蓄積のプラスチック急増」として紹介しました。対象は米国・ニューメキシコ大学(University of New Mexico)の研究論文(2025年発表)でしたが、今回のNHKもこれをフォローします。同研究では人の死後組織の前頭皮質やその他の臓器で、2016年の検体と2024年のものとの比較もしています。
その結果として、多くの臓器で総プラスチック(MNP)が確認され、脳は肝臓や腎臓より高濃度なこと。2016年から2024年の間にMNPは増加。脳内では約50%も急増していること。認知症の患者も12人の検査がされたが、認知症患者のMNPは更に高濃度になっている――などが公表されました。

番組で検証
「 一体どうしてナノプラスチックは本来異物を遮断するはずの脳の中に入り込んだのか?」という問いを中心に据えて取材は進んでいきます。

環境中のナノプラスチックの実態調査
番組ではまず、ナノプラスチックとは何か、どこから来るのか、といった基本から説明されます。
プラスチック製品は環境中で摩耗・分解し、非常に小さな微粒子(ナノサイズ)になります。そして目に見えないサイズまで細分化し、土壌・海洋・空気中に広く存在しており、それらの微小粒子が環境試料から検出される様子や、環境中で増加する過程が視覚的に示されます。

動物実験での検証
次に、人工的に標識したナノプラスチックをマウスに投与した動物実験が取り上げられます。
血液循環を経て 脳組織まで到達した痕跡が映像やデータで紹介され脳内到達のメカニズムが理解できます。

マウスの脳から検出されたナノプラスチック

血液脳関門
そして最大の課題は脳を細菌やウイルス、有害物質から守る血液脳関門(Blood Brain Barrier=BBB)をなぜ微小プラスチックが潜り抜けることができるのか、です。

血液脳関門は、血液中の多くの物質がそのまま脳に到達するのを防ぐ、生体の防御システムです。
脳の毛細血管の内皮細胞が非常に密に結合していて、不要な物質や病原体が脳に入るのを遮断しています。このBBBは人体の防御機構の内でも最強クラスとされており、それゆえにこの関門をすり抜けたプラスチックの存在が大きな波紋を呼んでいるわけです。

なぜナノプラスチックが血液脳関門を通り抜ける可能性があるのか?
専門家は以下のように推定します。

  1. ナノプラスチックはサイズが極めて小さいため通過しうる。
    ナノプラスチックは通常 1μm(マイクロメートル)未満、場合によっては数十〜数百ナノメートルの大きさです。
    このサイズ領域では、細胞やバリアの隙間や輸送メカニズムを利用して移動することが可能です。
  2. 細胞の取り込み(エンドサイトーシス)を利用する。
    血管内皮細胞は、栄養や必須物質を取り込むために エンドサイトーシス(細胞が物質を包み込んで取り込む現象) を行います。ナノプラスチックはこの仕組みに乗っかって細胞内に入り、そのまま脳側に移行してしまう可能性があります。
  3. タンパク質や脂質との結合が影響する可能性
    血液中では、ナノプラスチックは血漿タンパク質や脂質と結びついて「バイオロジカルコロナ」という膜を形成することがあります。
    このコロナがあると、細胞膜や輸送システムとの相互作用が変わり、通常は通れない場所を通過しやすくなる可能性があるのです。

そして血液脳関門とは別の通路ですが「嗅覚神経の経路」など、鼻から脳に直結するルートを通って侵入する経路がある可能性も指摘されています。

影響調査が急がれる。
これらの検証を踏まえ、番組は微小プラスチックの拡散を警告します。ただ人間や動物など生態系への影響はまだ調査・研究途上であると指摘します。認知症機能障害や神経疾患との関連も疑われていますが、明確な結論は出ていません。しかし微小プラスチックが血液脳関門を「突破する可能性がある」と示唆したこの番組は、脳をはじめとする人体内のプラスチック濃度が年ごとに高まっていることの監視と、人体影響の調査研究の必要性を強調しています。

番組を要約すると微小プラスチックの体内蓄積などが「今すぐ症状が出ないから安全、とは言えない」というもので、断定を避けた慎重な展開になっています。登場する研究者、識者の共通認識は「これは“結論の番組”ではなく、“問いが始まったことを伝える番組”」といえます。

「フロンティア 脳に忍び込むナノプラスチックを追う」はNHKオンデマンドで視聴できます。