第2部 一般社団法人「世界の子供たちのために」樺沢暢之代表理事
「プラウスチック汚染の現況と健康被害・先進地域での対策」
以下も参照ください。
第1部 「地球環境と人類の歩み 精神革命の必要性」浅井隆氏
第3部 「魚介類や食品、容器へのマイクロプラスチック混入と排泄の可能性」清水宗茂氏
樺沢氏講演要旨____________________________
世界と日本のプラスチック問題と健康への影響 先進地域の取り組み
- 日本の環境対策の遅れ
世界の温暖化対策ランキングで日本は58位と低迷。
専門家からは「再生可能エネルギーへの移行計画を作り直すべき」と指摘。
日本は清潔な国と言われるが、実はプラスチック問題では大きく遅れている。
- 世界規模で拡大するプラスチック危機
● 生産量の急増
世界のプラスチック生産量:4億6千万トン/年 → 2060年には13億2千万トン/年に増加予測。
アフリカで6倍、インドで5倍へ増加の見込み。
● 海洋汚染
毎年 800万トン が海へ流出。
2050年には「魚の重量をゴミが超える」との予測。
海洋生物の誤飲・絡まり、深海への蓄積など深刻。
● 大気中のプラスチック(新たな問題)
富士山の雲からもマイクロプラスチックが検出。
雲の形成核がプラスチック化し、ゲリラ豪雨など異常気象をさらに悪化させる可能性。
- マイクロ・ナノプラスチックの人体への影響
● 体内への侵入経路
食品、飲料水、空気、生活用品などあらゆる場面で摂取。
ペットボトル1本に50個〜12万個のマイクロ・ナノプラが含まれるとの研究も。
● 体内で見つかる部位
血液、血管、肝臓、腎臓、肺、脳、胎盤など。
● 健康リスク
血管内で血栓の核となり、脳梗塞・心筋梗塞の可能性。
生殖機能低下、ホルモンバランスの乱れ、発がん性物質の影響などが懸念。
乳幼児への影響が特に大きい(離乳食容器や哺乳瓶から億単位のナノプラが溶出)。
● 添加剤の危険性
柔軟剤、安定剤、UV吸収剤などの化学物質が有害。
EUでは2024年から食品接触素材のBPA(ビスフェノールA)使用全面禁止。
日本は規制が弱く、まだ使用可能。
- 日本のごみ処理・輸出の現状
● 日本はプラスチック生産・廃棄ともに世界上位
生産量:世界 5位
廃棄量:世界 2位
● 焼却大国・日本
世界の焼却施設の約半数が日本に存在。
しかし多くはエネルギー回収が不十分で、リサイクルとして評価されない。
● ごみの海外輸出
かつては中国が大量に受け入れていたが2017年に停止。
その後マレーシアやベトナムに流れ、不法投棄され海へ逆戻りする例も。
● 太平洋ゴミベルト
そこに存在するプラごみの 34%が日本由来。
日本海側のマイクロプラスチック濃度は世界平均の27倍。
- 取り組み事例と今後の課題
● 徳島県・上勝町(ゼロウェイスト先進地)
43種類にごみを細かく分別。
リサイクル率は80%以上で世界トップ。
不用品は交換できる仕組みを導入。
全国・世界から視察が来るほど注目されている。
● 農業での重大問題:プラスチック被覆肥料
肥料の殻がプラスチックで作られており、全国の田んぼの6割で使用。
土壌・水路から海に流出。
農家は多くが「これがプラスチックだと気づいていない」。
政府は2030年までに代替品を開発予定。
● 南極ですら汚染が進行
観光客の衣服由来の繊維が雪から検出。
黒い化学繊維が氷の融解を促進する恐れ。
- 生活の中でできる対策(講演の提案より)
ペットボトルを買わずに ステンレス製マイボトルを使う。
ティーバッグや不織布マスクはコットン製へ置き換える。
弁当や冷凍食品は陶器に移し替えて加熱。
プラスチック製のまな板・食器を木製やガラス製へ。
BPAフリー商品を選ぶ。
レジ袋・ストローなどシングルユースの削減。
まとめ
プラスチック問題は海・大気・土壌・人体すべてに深刻な影響を及ぼしている。
日本は世界的にみて対策が遅れており、法整備・企業努力・市民意識の向上が急務。
すでに体内への影響が報告されており、生活習慣の見直しが必要な段階に来ている。
地方自治体の先進例もあり、対策を進めれば改善は可能。