Database
以下も参照ください。
第1部 「地球環境と人類の歩み、精神革命の必要性」 浅井隆氏
第2部 「プラスチック汚染の現況と健康影響」樺沢暢之氏
1.自己紹介
• 東海大学 海洋学部 水産学科(静岡キャンパス)
• 専門は栄養学・健康科学・食品化学
• 海洋ごみ・マイクロプラスチックと「食・健康」の関わりを研究
2.現場で見た「マイクロプラスチックだらけの海」
宮古島の漂着ごみ

• 見た目は「きれいな海」というイメージだったが、実際は
o ペットボトル・漁具・タイヤ・発泡スチロールなど大量のごみ
o 3時間・150人でビーチクリーンをしても、まだ6割しかきれいにできないほどの量
o プラスチックの破片=マイクロプラスチックも大量

お台場海浜公園(高校生との調査)
• 規定に従い、20×20cm・深さ2.5cmの砂を採取
• 2mm以上のものだけ拾っても、1サンプルで100個近いマイクロプラスチック断片を見つけた高校生も
• 生徒たちは
o 「普段何気なく歩いている砂浜にこんなにあるとは…」と衝撃
o 「自分たちに何ができるか」をレポートにまとめている

4-2. 食塩の中から
肉眼レベル(0.1mm以上)
• 日本の市販食塩(国産数種+中国産)を30gずつ調査
• まず異物を拾って、FTIR(赤外分光装置)で材質を判別
o 国産の塩:
綿・紙・木片などが多く、プラスチックではない異物が中心
o 一部の中国産の塩:
AS樹脂(プラスチック)が検出
「国産はとりあえず大きいプラスチック片は少なそうで一安心」という段階。
肉眼で見えないレベル(20〜100μm)
• 沖縄・伊豆大島・徳島の海水由来の塩(30g)を精密解析
• 顕微鏡+自動判別装置で見ると
o 伊豆大島の塩では一試料30g中40個以上のマイクロプラスチック
o 共通して検出された主な材質は
ポリエチレン(PE)
ポリプロピレン(PP)
ほか、アルキド樹脂など
→ 結論:国産でも「海水から作った塩」には、見えないレベルのマイクロプラスチックが普通に入っている。
Q&A:ヒマラヤ岩塩なら安全?
• 質問:「ヒマラヤの岩塩なら大丈夫?」
• 回答:
o ヒマラヤ岩塩を含む岩塩系でも、マイクロプラスチックは検出されている
o 海水塩ほど多くない傾向はあるが、
採掘~輸送~包装の過程で空気中や袋・容器から付着する可能性
o 「完全に安全」とは言えない
4-3. 容器・包装由来
海外論文を見て、「国産も大丈夫か?」と気になり、以下の容器だけを取り寄せて中身なしで調査:
• 電子レンジ対応レトルト容器(主材料:ポリプロピレン)
• マヨネーズ容器(主材料:ポリエチレン)
• カップ麺容器(主材料:ポリスチレン)
• ドレッシング/飲料用ボトル(PET:ポリエチレンテレフタレート)
超純水で容器表面を洗い、その水をフィルターに通して分析したところ:
• 20µm以上のマイクロプラスチック粒子が
o カップ麺容器:表面に約91個
o その他の容器からも多数検出
※実際の使用時は「お湯を注ぐ」「電子レンジで加熱する」ため、さらに増える可能性が高いと考えられる。
4-4. その他、気になる食品・生活用品
• 貝類(アサリ、ムール貝など)
o プランクトンと一緒に海水を大量に取り込む性質上、マイクロプラスチックを溜め込みやすい
o 貝を「丸ごと」食べる料理(シーフードスパゲッティなど)は、リスクが高めと考えている
• 小魚(シラス・ジャコ・イワシ丸干しなど)
o 内臓ごと食べるため、マイクロプラスチックを摂りやすい
o 「シラスはどうか?」という質問にも、「可能性はあるので今後測ってみたい」との回答
• ティーバッグ
o 熱湯を注ぐとかなりのマイクロプラスチックが出るという海外報告あり
• ガム
o ベースが天然由来のものもあるが、合成樹脂(プラスチック)を含むタイプも多い
o 咀嚼によってマイクロプラスチック化するとの報告
• 調味料の塩
o 昔ながらの「天日干し・平釜」などの塩は、海の現状を考えるとマイクロプラスチック混入リスクは相対的に高く、
o 工業的に電気分解で作る塩の方が数は少ない傾向
最近の検査などから:
さらに小さい粒子でも
50µmのマイクロプラスチック
• 条件はほぼ同じで粒子の大きさだけ小さく
• 通常餌:168時間経っても約6割しか排泄されない
• キト酸入り餌:常に排泄率が高く、残存量が少ない
25〜30µmクラス
• より現実に近いサイズ
• 1日あたり約1.3万個摂取させ、2週間追跡
• 通常餌:
o 最終的に約4割が体内に残る(6割排泄)
• キト酸入り餌:
o 排泄率が有意に高く、腸内残存量も少ない
→ 大きさが小さくなっても、キト酸はマイクロプラスチック排泄を促進する効果を維持していると考えられる。
なぜキト酸が効くのか?(人工消化管モデル)
• ビーカー内で
o マイクロプラスチックのみ
o マイクロプラスチック+キト酸
を人工胃液・人工腸液と混合し、腸内pH(7〜8)で反応させる実験
結果:
• マイクロプラスチックだけ
o 沈殿するのは約20%、残り80%は浮いたまま
• キト酸を加えると
o 約80%が沈殿し、浮いているのは20%程度に
推定メカニズム:
• キト酸(プラスに帯電しやすい)が、
o マイナスに帯電したプラスチック表面と電気的に引き合い
o あるいは物理的に絡みつき
o 「塊」にして便として排泄されやすくしている