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B&G・プロジェクトはまず異常気象とプラスチック汚染問題に焦点を当て、問題点とその解決を探る作業を進めています。そしてこの二つの問題が深く関連していることが、最近の研究・調査で明らかになってきています。プラスチック汚染が異常気象の要因にもなってきているのです。
プラスチック生産が温室効果ガス大量排出
これを裏付ける基礎研究として取り上げられるのがローレンス・バークレー・国立研究所の調査(2024年)です。
プラスチック業界の成長は指数関数的に伸びその生産はここ数年、年間4から5億トン近くで、2050年には2,3倍にもなるといわれます。
プラスチックは化石燃料を原料とし、その抽出から生産までに多くのエネルギーを使い、生産プロセスのあらゆる段階で温室効果ガス(GHG)を排出します。
同調査報告によると、プラスチック生産によるGHG排出は2019年に22億トンに上り、世界の温室効果ガス総排出量の5.3%になりました。この排出量は航空・海運業界の排出量の13億トンを超えています。そして現在のような高い生産の伸びが続くと、2050年にはプラスチック生産による温室効果ガスの排出が、総排出量の21%から31%を占める可能性がある、とも予測されています。
汚染規制にロビー活動
自動車の排気ガス規制、電気自動車の普及などの中で、化石燃料の需要は年々減少しています。石油大手企業には2040年までに石油需要の純増の95%を占めるという予測もあるようです。そのためにプラスチック生産は石油業界にとって将来を担う重要な市場です。この夏、プラスチック汚染の規制国際条約作りがとん挫したジュネーブでの政府間交渉委員会で、規制反対の業界のロビー活動が目立った背景には、こんな理由もあるのです。
プラスチックはその生産過程だけでなく、原油など原料や生産物の配送などサプライチェーンの過程でも相当なGHGを生み出します。
更に使用済みになると、焼却などで再びGHGの産出になります。

プラスチック汚染は海洋のCO2吸収、貯蔵機能も阻害します。
海洋は地球で最大の炭素の吸収、処理機能を持ちます。その仕組みは2つです。
まずCO2を直接吸収します。溶かし込んだCO2を深海に沈め貯蔵します。
もう一つは海の植物プランクトンが光合成でCO2を取り込みます。このプランクトンが海洋生物の餌になり、食物連鎖が生まれます。海洋生物はフンを落とし、死骸が沈降します。
この形でCO2が長期保存、あるいは分解されます。
いろいろな推定がありますが、一般に人間の排出するCO2のうち、約30%前後が海洋に吸収されているといわれています。
ところが最近海外で、特にマイクロプラスチックが、プランクトンの光合成を低下させる、あるいは海洋生物の死骸の分解を抑えることを裏付ける研究が相次ぎ、プラスチック汚染が海洋のCO2吸収を低下させている可能性が指摘されています。
氷も溶かすプラスチック汚染
またプラスチック汚染による極地の海洋などのアルベド効果も注目されています。アルベドとは表面が太陽光をどれだけ反射するかの割合を指します。
「アルべドが高い」のは雪や氷で、新雪などは80~90%のアルベド(反射率)です。
逆に「低い」のは、太陽光をよく吸収する海やアスファルトで、海のアルベドは約6%とされています。
プラスチック汚染のアルベド効果とは、海氷や氷河、雪面にマイクロプラスチックが混在し、表面が暗くなり、太陽光を吸収しやすくなることです。このため氷や雪が溶けやすくなり、温暖化を加速させます。この現象は北極や南極で目立っており、深刻なリスクとして受けとめられています。
生産過程でのCO2大量排出に海洋のCO2吸収の阻害、氷山の溶融加速と、プラスチック汚染による地球温暖化、異常気象への影響は深刻で、本格的な実証研究が急がれています。